「へぇ、私の好物はすぐ忘れるくせに麻菜ちゃんの好物は覚えてるんだね」
「いいだろ、別に」
「妬けちゃうなぁ」
「ばーか」
仲森さんと幸さんのこんなやり取りが……
あまりにも恋人っぽくて……
わたしなんてここにはいなくて、二人の世界に入っているみたいだった。
仲森さんも口は悪いけど、楽しそうだし。
ダメだ……
もう、わたし……
「わ、わたし、用事を思い出したので、お先に失礼します」
ガタンと席を立ち、慌てて出ようとした。
仲森さんも幸さんも呆気にとられたようで、わたしを眺めていた。
「あっ、麻菜」
ドアを閉める直前、仲森さんに呼び止められる。



