「け、結構です!一人で、帰れますから」



慌てて掴んでいる彼の手を払いのけると、無表情の彼がこちらを向いた。


無言の圧力……というのだろうか。


こんな瞳で見つめられたら、まるでとても悪いことしてるような感覚に陥る。


ここで折れたらダメなのに……


思わず、その手を掴みたくなる。









「そいつに、触んないでくれる?」


言葉なしに、ただ見つめ合うわたしたちを遮ったのは、この声だった。


いつもみたいな温かみのない視線を向ける、ジョンだ。




「誰かと思ったらジョンか。どうしてお前がそこまで食ってかかる?」

「そんなことどうだっていいだろ」



少し小馬鹿にしたような言い方の仲森さんに対し、ジョンは怒り丸出しだ。


仲森さんとジョン、二人の間に見えない火花が散っていた。




「ジョンも麻菜に触るなと言う権利はないと思うけど?」

「麻菜が嫌がってただろ。こいつをこれ以上困らせるなよ」