騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~




「あっ、そうそう!麻菜ちゃんって私の彼氏と知り合いだったんだってね」

「え?幸さんの彼氏さんと?……いえ、わたし、お会いしたことないですけど」



「ふふっ、私もこの前聞いたばかりなんだけどね。私の彼氏、麻菜ちゃんがよーく知ってる人よ」

「そうなんですか?」



一体誰なんだろう、とますます頭の中は疑問でいっぱいになる。




「今度会わせてあげる!じゃあ、そろそろ行くわね」


ヒラヒラと優雅に手を振って、幸さんは帰っていった。


幸さんの彼氏……って、わたしがよく知ってる人?


幸さんっていつも肝心なこと教えてくれないから、ますます謎が深まっていく一方だ。




「あっ、ちょうどいいところに。麻菜」



どうしても反応してしまうこの声に呼び止められて、一気に複雑な思いが押し寄せる。



そう……

化粧室からロッカールームに向かう途中で、声をかけてきたのは仲森さん。




「な、何ですか?仲森さん」

「麻菜のことだから、さっきの会議の内容よく分かってないと思ってな」


「あ……それは……確かに、そうですけど……」

「まあ、明日店長から全員に話があると思うけど、お前には先に話しておくか」