あれは9年前。
わたしが高1で、仲森さんが高3だった頃のこと。
その頃は、「仲森さん」じゃなくて「秀ちゃん」って呼んでいた。
秀ちゃんとわたしは、幼馴染で。
わたしはずっと秀ちゃんの背中ばかり追いかけてきた。
幼い頃から秀ちゃんが大好きで、高校までこうして同じ所に来たんだ。
もちろん秀ちゃんに対する大好きは、幼馴染に対するものではなくて。
ちゃんと異性に対するものだ。
「麻菜、ずっと麻菜のことが好きだったんだ。付き合ってほしい」
高校に入ってすぐのことだった。
下校途中、夕日をバックに秀ちゃんから告白されたのは。
「わたしも秀ちゃんのこと、ちっちゃい頃からずっと大好きだったの」
お願いしますと言うと、秀ちゃんは抱きしめてくれて。
15歳の春。
わたしと秀ちゃんの関係は幼馴染から、恋人へと変わった。



