結衣は少し困って絶句する。
 実のところ、ロイドからプレゼントをもらった事がないのだ。

 ロイドからもらった物は、結婚指輪と小鳥ロボットだけだ。
 小鳥ロボットはロイドのマシンが迷惑をかけたお詫びとしてもらった物で、結婚指輪に至っては、日本の儀式「指輪の交換」がなければ、もらえなかったかもしれない。

 バレンタインデーには毎年、激甘チョコレートケーキをあげるが、ホワイトデーにお返しがあった事はない。
 そもそもクランベールに、そんなイベントはないのだから仕方ない。

 お返しの催促をするのも浅ましいので黙っている。
 ロイドはその日のチョコレートケーキの意味すら知らないだろう。

 元々結衣としては、バレンタインデーに好きな人に手作りのチョコレートケーキをあげるという、長年の夢が叶ったので満足しているのだ。

 プレゼントをもらった事がないので、ここは想像で答えるしかない。

 結衣は悟られないように、余裕っぽい笑顔を浮かべて答えた。


「私は好きな人からのプレゼントなら、何でも嬉しいわよ」