クランベール国民の証、識別カードは店で買い物をする時、認証装置にかざして決済を行う。
 同時にカードの持ち主が手の平をかざす事で、カードに記録された生体情報と照合を行うので、他人のカードは使えないのだ。

 偽造が困難な上に、本人にしか使えないカードで、認証エラーが出なかったという事は、ユイの店に来ていた少年は、ベル=グラーヴという人物なのだろう。
 ロイドの知っている人物ではない。


「知ってる人?」


 ユイが不思議そうに首を傾げた。


「いや、知っている奴に、見てくれが似ていただけだ」


 二年前からいつも心に引っかかっていた人物、ランシュ=バージュは元気だった頃、その少年によく似ていた。

 二年前、遺伝子の宿命によって命の終焉を迎えていた彼は、見る影もなく老化して別人のように変わり果てていた。