大皿に山盛りになったシュークリームをペロリと平らげて、ロイドはいつものように仕事に出かけた。

 結衣とランシュはいつもより遅い朝食を摂り、それぞれ掃除を始める。
 今日は店が休みなので、それほど慌てる事もない。
 結衣はいつもより余裕を持って、二階の掃除と洗濯を片付けた。

 作業を終えて一階へ下りると、すでに掃除を終えたランシュが、リビングのソファに座って、ロイドがテーブルに置きっぱなしにしていた機械工学の科学雑誌を読んでいた。

 科学技術局を辞めて、機械から遠ざかっていたようだが、今も興味は尽きてはいないようだ。

 結衣は少し離れて隣に座り、テーブルの上の小鳥を取って電源を入れた。
 手の平に乗せた小鳥の頭を撫でながら、ゆうべの事を思い出す。

 ランシュの助言に従って、結衣はロイドの好きなお菓子を作った。
 自分がロイドを元気づける手立ては、それしかないと思ったからだ。
 ところがロイドは、それを拒絶した。

 寝る直前だったからかもしれないが、唯一の手段を拒否され、結衣は目の前が真っ暗になったような気がした。