抵抗していたユイが、ピタリと暴れるのを止めて不思議そうに見つめる。
 相変わらず無自覚の鈍さに、本気でお仕置きしてやりたくなった。

 ロイドはムッとして、額を叩く。


「オレ以外の男に抱きしめられたりするな」
「見てたの?」
「あぁ。心臓が止まるかと思った」


 あの刃物を見た時には、本気でそう思った。
 なのにユイは呑気に笑う。


「大げさね。ランシュは私の事、お母さんのように思ってるだけよ」
「そうだとしても、あいつは男だ」
「それって、ヤキモチ?」
「う……」


 からかうように見上げるユイを見て、名案を思い付いた。

 緊張感に欠けるし、格好悪いが、ヤキモチなら堂々とユイに忠告ができる。
 堂々と二人の邪魔ができる。