ロイドの浮気を、心配しているわけじゃない。
 ロイドに愛されている事は、充分に分かっている。

 けれどロイドのそばには、彼の仕事を理解し、悩みを分かち合える才色兼備のひとがいる。
 ロイドの妻には、そういう人の方が、自分よりふさわしいのではないだろうかと思う。

 本来なら妻である自分が、共に悩みを分かち合い、支えになるべきなのに、それができない。

 王子失踪事件の時も、機械の事もクランベールの文字も分からず、ロイドの手助けになるような事が、結衣には何も出来なかった。

 今ではクランベールの習慣も文字も覚えたけれど、相変わらず何の力にもなれない自分が情けなくなった。

 少し泣きそうな気分になっていると、ランシュがそっと頬に手を触れた。


「ユイ、そんな顔しないで。ごめんね。ちょっと意地悪し過ぎちゃったね。大丈夫。先生は確かに女好きだけど、オレの知ってる限りじゃ、局内の女性に手をつけた事は一度もないよ」


 それはそれで、結構意外だ。
 初対面の結衣に、出会ったその日のうちに強引にキスしたエロ学者なのに。