毎朝、甘い香りに包まれてゴロゴロしていると、階下からユイが朝食が出来た事を知らせてくる。
 その声を合図に、ロイドはベッドから這い出して階下へ向かう。

 食事は基本的にユイが作る。
 最初の頃は手つきがおぼつかない上に、手際が悪いので、通常の三倍は時間がかかっていた。
 見かねて手伝おうとすると、頑固なユイは自分でやると言って聞かない。

 ニッポンから大量に持ち込んだ本を見ながら作っているせいか、味が酷いものを作った事はないが、毎日夕食にありつけるのは、九時や十時を回っていた。

 さすがに一年経つと手慣れてきて、余裕も出てきたせいか、時々ロイドが作ると喜ぶようになった。

 ユイの作る朝食はいつもワショク(和食)だ。
 ニッポン独自の食材で作られたミソシル(味噌汁)と深めの器に入ったライスがおもしろい。
 小さな四角いフライパンを使って、クルクル巻いて作る甘い卵焼きもロイドは気に入っていた。

 クランベールにはないニッポン独自の食材は、ユイが実家から送ってもらう。

 最初はユイが直接取りに行っていたが、広域人物捜索装置が科学技術局内に移されてからは、一般人のユイは頻繁に出入りが出来ない。