バイナリー・ハート

 自分が最高呼ばわりされるのは嬉しいが、犯罪者として最高という意味なら、なんだか複雑な気分だ。

 ランシュは一応カードを持っているが、結婚前のユイと同じように特別に発行されたカードで、住民情報も名前と年齢、連絡先だけという曖昧なものだ。

 そのため住民としての権利も、色々と制限されている。
 ロイドの養子になる事で、初めて人としての全ての権利を得る事が出来るのだ。


「じゃあ、ランシュは来年お兄ちゃんになるのね」
「あいつには、ママに対して変な気を起こさないように、しっかり躾けないとな」


 二人して顔を見合わせて笑った。

 ランシュが憧れて欲した、家族の居場所がここになる。

 ロイドが、ユイと結婚するまで知らなかった小さな幸せ。

 家に帰れば、家族が温かく出迎えてくれる。
 そんな何気ない幸せの瞬間を、今後ランシュにも味わってもらいたいとロイドは思った。

 その時、玄関が開き、ランシュが帰ってきた。

 ロイドはユイと共に、笑顔を向けて出迎える。


「おかえり」


 ランシュは少しの間戸惑ったようにロイドとユイを見つめたが、やがて嬉しそうに笑って答えた。


「ただいま」



(完)

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 最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。
 クランベールシリーズはこれで、全編完結です。
 章のタイトル(サブタイトル)になっている英語は、コンピュータのコマンドや命令語です。言葉としての英語とは、微妙に意味が違います。
 意味は以下の通りです。
 Setup = プログラムをコンピュータにインストールし動作環境を整える、命令群。
 Run = プログラムを実行するコマンド。
 DO While = 繰り返し命令。
 Resume Next = エラーから復帰後、次のステップへという命令。

 タイトルの「バイナリー・ハート」は直訳すると「二進数の心」
 コンピュータ(二進数)の作り上げたランシュの心という意味です。