ロイドはランシュを睨み、額を叩いた。


「呼吸を忘れる人間があるか!」


 ランシュは額を押さえながら反論する。


「だってオレには必要ないし、あなただって意識して呼吸してないでしょう?」
「それはそうだが、大丈夫なのか? 肺活量の検査もあるぞ」
「フリをするくらいは出来るし、機器の方はごまかせますから」


 ヘラリと笑って、ランシュは事も無げに言う。


「まぁ、今日の検査はいいとして、改良の必要はあるな。おまえ、しばらく人と至近距離での会話は控えろ」

「え? ユイとも?」


 ロイドは思い切り顔をしかめて、ランシュを睨んだ。


「ユイとは今後一切禁止だ」
「えぇ?!」


 不満そうな声を漏らすランシュを引っ張って、ロイドは玄関に向かう。


「さっさと行くぞ。遅刻する」
「行ってらっしゃい」


 背後でユイが、クスクス笑いながら送り出した。