ユイはエプロンの裾で涙を拭い、鼻をすすりながら答えた。


「確信したのはその時だけど、もっと前から知ってたわ。だってランシュって、鼓動が聞こえないし、息してないんだもの」


 鼓動は、抱きしめられた時に気付いたのだろう。
 だが呼吸はどうやって気付いたのか、見当も付かない。
 それを尋ねると、ユイはクスクス笑いながら答えた。


「あなたたちって色々似てるところがあるのよね。ほら、あなたがよくやる耳元でコソコソ話すの、ランシュも時々やるのよ」


 ユイは耳元でコソコソ話されると、背筋がゾクゾクするから苦手だという。
 だがランシュの時には、なぜかゾクゾクしない。

 ロイドに限らず、他の人でもゾクゾクするのに、どうしてランシュの時には平気なのか、不思議に思い原因を考えた。

 そして、ロイドの時には耳や首筋に息がかかるのに、ランシュの時には声だけ聞こえて息がかからないことに気付いたらしい。

 試しに自分の手を口元に寄せてしゃべってみたが、どうやっても息をかけずにしゃべることは出来なかったという。
 それで、ランシュが呼吸をしていないことに気付いたのだ。