話を聞いてランシュは、恐る恐るロイドに問いかけた。


「オレは、人として生きていてもいいんですか?」
「あぁ」
「絶対命令がないのに?」

「そんなものは必要ない。生きる事に焦がれ、誰よりも死を恐れたおまえなら、過ちを犯す事はないと確信している」


 絶対命令の中で、一番優先度が高く重要視されているのは、人に危害を加えてはならないというものだ。

 絶対命令が、なぜ義務づけられているのか。
 それは心のないロボットには、人の痛みや命の重みが理解できないからだ。

 心を持ち、死を恐れたランシュには、それは充分に分かっている。

 ランシュは人として生きる道を選んだ。

 ロイド自身も腹を括らなければならない。

 これからの方が大変だという事は分かっていたが、ロイドはなぜかホッとして、心の霧が晴れたような気がした。