その無邪気な表情は、かつてロイドを慕い、好奇心に満ちあふれていた、幼い頃のランシュを思い出させる。

 晩年のランシュは、子供の頃のように、ロイドを慕う事はなかった。
 大人になったのだから、当たり前と言えば当たり前だが、なんでも自分で解決しようとして、頼るどころか意見を聞く事も稀だった。

 今思えば、残り少ない人生への焦りが、他人の意見に耳を傾ける余裕を失わせていたのだろう。

 昔のランシュを垣間見たような気がして、ロイドの頬は思わず緩む。


「おまえと、こんな話をするのは初めてだな」
「そうですね」
「おまえ、女に興味がないのかと思ってたぞ」
「女っていうか、人に興味を持たないようにしていました」
「そうか」


 あの無表情で冷めた態度の裏では、長くは生きられない運命(さだめ)と知り、感情を押し殺して、多くの事を諦めてきたのだろう。

 やっと死の恐怖から解放され、自由と可能性を手に入れたランシュの人生を、ここで終わらせるのは忍びない。