ベッドの縁に腰掛けメガネをかけると、ランシュが目の前まで歩み寄って来た。

 朝日を浴びた穏やかな表情を見据えて、ロイドは憤るままに冷たい声をかける。


「どうして、ここにいる?」
「逃げるのがイヤになりました」


 こちらがどんな思いで、一晩の猶予を与えたのか、分かっているのだろうか。

 あっさりと言い放つランシュに、ロイドの憤りは益々募る。
 思わず声を荒げた。


「おまえは、自分がどうなるか分かっていて、ここにいるのか?!」
「はい」
「命と引き替えにしてまで、逃げるのがイヤな理由とは何だ?」


 ランシュは口をつぐみ、俯いて視線を逸らす。

 やはりそうか、と納得して、ロイドはひとつ嘆息した。