少しでも彼を非難しようとした事が情けなくて、余計に涙が溢れ出した。


「分かってる。ロイドはそういう人よ。私は何があっても、あの人の味方だって約束したから。でも、どうしてランシュは逃げ出さなかったの?」

「逃げ出しても行く当てはないし、もう、ここには近付けない。二度とユイに会えないなら、オレにとっては同じ事だから。先生に迷惑をかけるより、素直に従う方がいいと思ったんだ」


 ランシュは元気づけるように、結衣の肩をポンと叩いた。


「ほら、もう泣かないで。最後は笑って送り出してよ。オレはやっと眠れるんだ。ユイの笑顔を思い浮かべながら眠りにつきたいから」

「う……ん……」


 頷きながらも、結衣の涙は止まらない。


「ユイ、大好きだったよ」


 囁くようにそう言って、ランシュは頬に、優しいさよならのキスを送る。

 そしてそのまま背を向けて、振り返ることなく、キッチンを出て行った。