ロイドの立場上、仕方のない事だとしても、ついつい恨み言が口をついて出た。


「先生を悪く思わないであげて。あの人は精一杯譲歩してくれたんだ。自分が寝ている間にオレが逃げ出したなら仕方ないって。オレに一晩の猶予をくれたんだよ」


 頑固なロイドが、ランシュのために譲歩したのが意外で、結衣は思わず目を見張る。
 故意に逃がした事が知れれば、自分もただでは済まないはずだ。

 だが、すぐに納得した。

 職務に忠実で頑固なロイドが、ルールに背く時は、自分が全責任を負おうとする。

 そしてそれは、誰かを守るため。

 かつて、王命に背いてまでも、結衣を守ろうとしていた。

 ゆうべロイドは、ランシュをランシュだと認めたのだ。

 ゆうべ縋るようにして、見捨てないでくれと言ったのは、この事だったのだと分かった。

 一番辛いのは、結衣でも、処分されるランシュでもなく、その決断を下さなければならないロイドなのに。