ランシュは俯いて、ポツリと吐露する。


「せめて夢の中で、ユイと恋人同士になれたらなぁ、って何度も思った」


 そして顔を上げると、慌てて取り繕った。


「ごめんね。もう、そんな事考えないから」
「ううん。気にしないで」


 昨日の今日では、ランシュの気持ちが、まだ吹っ切れていないのも頷ける。
 気持ちを簡単に切り替えられるわけはない。

 結衣もロイドに「好きになるな」と言われた時、どうしても気持ちを変える事は出来なかった。

 ランシュの感情が、完全に機械によって作り出されたものなら、報われない想いなどすぐに切り捨ててしまえるのではないだろうか。

 それが出来ないという事は、ランシュに心がある事の証明に他ならない。

 ロボットのランシュは、完璧で高性能な身体を持ちながら、心は不完全で不安定な人間そのものなのだ。

 それをロイドに分かって欲しい。

 ランシュの切ない気持ちを思うと、胸が締め付けられるような気がした。