「……先生は、オレをランシュだとは認めてくれなかった」
「え……」

「オレはあくまで、ランシュの記憶を持つロボットに過ぎなくて、ランシュの命は二年前に消えたんだって」


 結衣の知らない、人間だった頃のランシュを、ロイドは知っている。
 そんなに今と違っているのだろうか。
 それにしては、今まで気付かなかったのも不思議だ。


「そんなに今のランシュは、昔と違うの?」

「違わないと思うけどな。だって記憶は同じだし。ただ、オレには肉体が滅ぶ前の、約五ヶ月間の記憶がないんだ。死ぬ前に何を考えていたのかは分からない。もうすぐ死ぬんだっていう覚悟はあったんだけど。だからどうして、この身体を作ったのか不思議なんだ。免職になって作る事を中断されて、絶望してた。研究室に出入りできなくなったから、実質上部屋に軟禁状態で、どうせもうすぐ死ぬんだしって、自暴自棄になってたはずなんだけどね」

「え? ランシュって科学技術局の中に住んでたの?」


 結衣が問いかけると、ランシュは気まずそうに頭をかいた。