リビングを出たロイドは急いで二階へ上がり、真っ直ぐランシュの部屋へ向かう。

 小鳥の絶対命令が狂う事はない。
 絶対命令はその名の通り絶対だ。

 センサ類が故障して、相手が人間かどうか判断できない時は攻撃しない。
 攻撃行動は、相手が人間ではないと断定できる場合にのみ有効なのだ。

 小鳥がランシュを攻撃したという事は、ランシュは人間ではない。

 ロイドはノックも忘れ、部屋の扉をいきなり開いた。

 濡れた服を脱いで上半身裸のランシュが、驚いたように振り向いた。

 ロイドの様子に何かを察したのか、口元に薄い笑みを浮かべ、ゆっくりと身体をこちらに向ける。
 その華奢な身体を見つめて、ロイドは口を開いた。


「ランシュ、おまえ、ロボットなのか?」


 ランシュは目を細め、黙ったまま腕に巻かれた包帯を、スルスルとほどいていく。
 包帯がハラリと床に落ち、ガーゼをはぎ取ると、露わになった無傷の白い腕をロイドに見せつけた。

 嘲るような笑みを湛えて、ランシュが言う。


「気付くのに随分かかりましたね。先生」



(第2話 完)