当時、科学技術局のバイオ科学者だった彼の母親クロワゼ=バージュが、自らの卵母細胞と事故死した夫の体細胞から、助手を欺き、法に背いてランシュを作った。
それが発覚したのは、ランシュが産声を上げた後だった。
ヒトクローンの作成は前陛下の勅命により、二十七年前から法律で禁止されている。
さすがに生まれたものを殺すわけにはいかないので、ランシュは生まれた時から科学技術局の監視下に置かれ、局内で生活していた。
ランシュの母は今も服役中で、一生牢から出られない。
科学者が科学に関する法を犯すと、一般人よりも遙かに罪が重いのだ。
当時のロイドはまだ子供だったので、事件には関与していないが、国の科学のトップ機関での不祥事が、世間を騒がせたのは覚えている。
対外的にランシュは、生後間もなく死亡した事になっている。
ランシュが生きている事が知られれば、彼がいつまでも好奇の目に晒されるばかりか、科学技術局の不祥事がいつまでも人の記憶から薄れる事がないからだ。



