ふと不安に駆られて、結衣はベッドを抜け出した。

 自分やロイドが寝静まった後、ランシュがコッソリ家を出ていったのではないかと気になったのだ。

 結衣は寝室を出ると、足音を忍ばせて、ランシュの部屋へ向かった。

 そっと扉を開けて、中の様子を窺う。
 ベッドの上にランシュの姿を認めて、結衣はホッと息をついた。
 再びそっと扉を閉じる。

 結衣はランシュがずっといてくれても一向にかまわないが、ランシュ本人は気持ちの整理がつくまでは辛いかもしれない。

 ロイドと仲違いしている理由も分かった。
 やはり一刻も早く、ロイドに相談するべきだろう。

 ランシュの想いは伏せておくとして、出て行くにしても、ロイドとの和解や、この先の生活について、なんの糸口も見えないままで、彼が出て行くのは心配でならない。

 たとえランシュが簡単に死ぬ事がないとしても、彼には結衣と同じ心があるのだから。

 少なくとも結衣にはそう見える。

 人は、食べて、呼吸して、それだけで生きているわけではないから。

 今から二度寝したら、絶対寝過ごしてしまう。
 結衣は自室に入り、身支度を整えて階下へ下りた。