「少し頭を冷やして、今後の事を考えるよ」
「今後って?」


 結衣も立ち上がって尋ねる。

 ランシュは結衣の前を素通りして、リビングを横切りながら答えた。


「だって、オレと一緒に住むのイヤでしょ?」
「出て行くの? カードが使えないのに、困るでしょう?」


 結衣は咄嗟に、ランシュの腕を掴んだ。
 立ち止まったランシュは、皮肉な笑みを浮かべる。


「カードがなくてもオレは簡単に死なないんだ。さっきので分かったんじゃない? オレには元々、人を好きになる資格なんてないんだよ」


 ランシュは結衣の腕をほどき、先ほど血のついた手の平を見せて笑った。


「よく出来てるでしょ?」


 言葉もなく見つめる結衣に背を向けて、ランシュはリビングを出て行った。