確かにランシュが結衣の結婚を知ったのは、店先でロイドと鉢合わせした、あの日だ。

 ベルが亡くなって居場所のなくなったランシュに、結衣はしばらく、うちにいたらどうかと提案した。

 最初ランシュは酷くうろたえた。
 今思えば、結衣を未婚だと思っていたのなら当然だろう。

 結衣の方は、単に遠慮しているものと思っていた。


「主人に相談してみないと分からないけど、多分大丈夫よ。あの人、面倒見のいい人だから」


 結衣がそう告げると、一気にトーンダウンしたランシュの、苦笑にも似た複雑な表情が思い出される。

 ランシュが好きな年上の女性とは、自分の事だったのだ。

 ランシュは結衣を抱きしめたまま、言葉を続ける。