翌日ロイドは科学技術局で、仕事の合間にベル=グラーヴなる人物について調べてみた。
 ラフルールの住民管理課にいる知人に問い合わせたところ、すぐに正体は分かった。

 ベル=グラーヴ 九十二歳 女。
 ラフルールでひとり暮らし。
 おまけに三日前に死亡している。

 ユイの店に通っていた少年は、他人のカードを使用していたのだ。
 彼の言っていた祖母が、ベル=グラーヴだったのだろう。

 だが、認証装置がエラーを起こしていない。

 どうやって他人のカードを使う事が出来たのかを考えると、少年はもしかしたら本当に、元気になったランシュかもしれないと思えた。

 機械工学の天才児とまで言われたランシュなら、カードに何らかの細工を施す事くらい出来そうな気がする。

 途端に胸騒ぎがして、ロイドは席を立った。

 白衣を脱いで部屋を出ようとした時、やってきた副局長とぶつかりそうになった。

 驚いて見上げる副局長に、ロイドは短く告げる。


「家に忘れ物をした。ちょっと帰ってくる」


 そして早足で、科学技術局を後にした。