昔からたまに見せる笑顔がかわいいと女性局員たちの間では評判だったが、基本的に無表情だったランシュが、初日にロイドと交渉しているわずかな間にも、めまぐるしく表情を変えた。

 局を出て一般人としてベル=グラーヴと暮らしていた二年間が、ランシュの感情を育てたのだろう。

 ソータの存在はランシュの復讐を阻むと同時に、同年代の同性との交遊という、ランシュにとってもいい経験になるはずだ。

 ソータの滞在期間、十日間の内に、普通の二十歳らしさを取り戻し、復讐など忘れてくれれば、それに超した事はない。

 ロイドは広域人物捜索装置にソータの部屋の座標を入力し、ガラスの筒に入った。
 手にしたリモコンで遠隔操作を行い、時空移動を開始する。

 装置が作動し、ロイドを見守っていた管理係の姿が、やがて光の幕に覆い隠された。