ユイが風呂に入っている間、リビングのソファに腰掛けて、ロイドは再びランシュの事を考えた。

 もしも今も生きているなら、ランシュは今年二十歳になる。
 元気になったとしても少しは大人びているだろう。
 ユイの店に来ていた少年がランシュだとしたら、どうやって生き延びる事が出来たのかも気になる。

 明日、識別カードの持ち主、ベル=グラーヴについて、調べてみる事にしよう。

 そんな事を考えていると、ユイが風呂から上がってきた。

 ロイドは立ち上がり、一階の灯りを消すと、ユイを引っ張って二階へ向かう。


「今日はさっさと寝るぞ」
「え? まだ九時だけど、明日早いの?」


 相変わらずとぼけた事を訊くユイの額を叩く。


「毎朝早いのはおまえの方だろう。この半年、オレがどれだけ我慢してると思ってるんだ。早く帰った時ぐらい、わがまま言わせろ」

「いいけど。せっかく早く帰ったのに、さっさと寝ちゃうの?」


 キョトンと首を傾げるユイに、思わず全身の力が抜ける。
 この鈍さは何年経っても変わらない。

 気を取り直して、ロイドはユイを抱き上げた。
 呆気にとられたように見つめるユイに、顔を近付けてニヤリと笑う。


「ただ寝るだけなわけないだろう。おまえ、子供が欲しいんだろう?」
「……え……」


 ようやく理解したユイを抱えて、ロイドは笑いながら寝室に入った。