病床の彼は、ロイドを睨んで宣告した。


——オレの大切なものを奪ったあなたに、復讐してやる——

 ランシュが元気になって戻ってくるなら、復讐でも何でも受けてやるとロイドは答えた。

 ユイの話を聞いて、本当に元気になって戻って来たのかと思ったが、どうやら人違いのようだ。

 遺伝子に刻まれた宿命から、逃れようはない。
 元々ランシュが元気になる見込みは、限りなくゼロに近かった。

 ロイドが彼に会ったのは、それが最後だ。
 その一ヶ月後に、ランシュは入院中の病院から失踪した。
 一度、科学技術局に姿を現した事は分かっているが、その後の消息は分からない。

 動く事もままならない状態だったランシュが、今も生きている可能性は低いが、遺体が見つかったという話も聞いていない。
 消息が分からないので、ずっと心に引っかかっていたのだ。

 食事と片付けを終え、風呂から上がると、ユイが明日の仕込みをちょうど終えたところだった。