「そうか、その手があったのか!」
急に元気になったようすに店長は苦笑した
鞄からケータイを取り出した津川は画面を睨みならが
ああでもない、こうでもないっとメールを打っている
どうやら、ナナコさん本人に気になる男性が居るのかを聞こうとしているようだ
「なにしてるんだよ?」
自分の存在を完全に無視されている中野は少し不機嫌そうに訪ねた
「ナナコさんに直接聞いてみようと思ってな!お前のことを気にしてるかなんて本人しか分からないことだからな」
それだけ伝えるとまたケータイを睨みながらメール内容を考えている
その隣で中野が顔をしかめている事には気がついていないようだ
「ちょっと待てよ、お前ナナコさんのメアド知ってるのか?」
「知ってるけど、なに?」
メールに夢中の津川は少し不機嫌そうに答える
ケータイから目をはなし中野を見ると、思いっきり顔をしかめている姿に驚いた
「なんだとお前!なぜそれを今まで言わないんだ!!」
急に怒鳴りだした相手に少し戸惑いながらも理不尽に怒られてはこちらも気分がいいものではない
「聞かれてもないのに言う必要なんてないだろうが!それにお前も知ってるんじゃないのか?!?」
そう、津川はもちろん中野もナナコさんの連絡先を知っているのだと思っていたのだ
当然そう思っていたのだから、わざわざ相手に伝えることではない
当たり前に知っていると思っていたのだから
だが実際は違ったのだ
中野はナナコさんの連絡先など知らず
たまたま会ったナナコさんを
たまたま食事に誘い
たまたまOKしてもらえた
ただの運がいい奴だったのだ