「お、おい、どうしたんだよ?」
「俺と同じだ...」
「は?なにがだよ?」
「だから!!」
はぁ....
大きく溜め息を吐くと津川は腹を決めたのか顔を上げた
「俺の好きな人も○×カードに勤めてるナナコさんだ」
「・・・・・・・・」
お互いを沈黙が包む
先に口を開いたのは中野だった
「マジでか?」
「こんな嘘ついてどうするんだよ」
「お前の言うナナコさんって髪は長いか?」
「綺麗な黒髪だ、それに長い」
「身長は!?」
「160くらいってところかな」
「同じ女性の可能性大だな...」
「「はぁ、ありえねぇ...」」
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そんなこんなで一週間後
中野と津川は自分たちの恋を競い合うライバル同士として
なぜか毎日共に飲兵衛で飲むようになっていた
会話の内容は専ら、2人の憧れナナコさんの事についてだ
始めに戻るようだが
今日は中野がナナコさんとの食事の話を自慢するところから始まっていた
「お前、図々しくナナコさんを誘ったんじゃないだろうな!」
「そんなわけあるか!ナナコさんも乗り気で食事に行ったんだよ」
「ナナコさんは優しいからお前の強引な誘いを断れなかっただけだ..絶対そうだ..」
中野が食事に行ったことを素直に認めたくない津川は
もはや現実逃避していた
「素直に認めた方が楽だぞ?どんだけ現実逃避したって俺とナナコさんとの食事会は現実だからな!」
ガハハッとまたもや品なく笑うと空になっているジョッキを持ち上げ店長に追加のビールを催促する

