この男達の名は津川と中野
悔しがっていた方が津川
豪快に笑っていた方が中野だ

2人の始まりは
この店、飲兵衛だった
友達ではない
そう、けして友達ではないのだ
それなら
なぜ一緒に飲んでいるのか
それは男のプライドのせいかもしれない

「くだらないプライド」

男達からしたら大事なことらしいが
どうも客観的に見ると
子供のケンカのようにも見える
そんな2人の出会いは
一週間前にさかのぼる


津川は仕事終わりに癒しを求め居酒屋を探した
仕事場近くに見つけた飲兵衛に何の気なしに入ってみたが
そこは自分に比べては年齢層が高い店に見えた

少し居心地の悪さを感じながらカウンターに目をやると
自分と同じくらいの男を見つけ嬉しくなり
その男の隣に腰を下ろした
その男こそ、中野である

中野は常連客のようで店長らしき人と話をしていた

津川は、それを横目におつまみの枝豆を口に運びチビチビとビールを飲んでいると隣に座っている中野の声が嫌でも聞こえてくる

「でな、店長聞いてくれよ!俺はな、そのときこの人しか居ないって思ったんだ!!」


中野は熱い気持ちを話しているようだが店長は呆れたような顔をしていた
たぶん何度も聞かされている話なんだろう

そのうち店長も忙しくなってきたのか中野の相手をやめ右へ左へと慌ただしく動き出した