注文していた焼き鳥を頬張り
空腹を満たしながら
中野は興味津々でナナコさんとのメールのやりとりを聞く
だがプライバシーの侵害だと津川は一向に教えるようすはなかった

実際は、連絡先を知っていると言うだけで
それほど頻繁に連絡をとっているわけではない
メールの内容もささやかな日常的なメールしか送ったこと無いのだ

そう、ただのチキン野郎

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お疲れ様です
今日は暑かったですねぇ

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なんて世間話にも満たないようなメール内容なのだ

だが変な意地を張っている津川は中野に断固として内容を教えるつもりは無いようだ

そのせいか、中野の想像は嫌な方に膨らんでいく

「お前、まさかナナコさんをメールで口説いたりしてんじゃないだろうな!」

終いには想像で顔を青くしていた

実際はそんなことは無い
口説くどころか会話すら出来ているか怪しいところだ

「男ならメールや電話なんかに頼らず、ちゃんと目を見て口説けー!!」

「いや、誰も口説いてるなんて言ってないだろ!!」

「じゃあ内容を見せてみろ」

「なんでそうなるんだ!見せるわけ無いだろうが」


中野の妄想が広がりすぎて
津川は少し引いていた
しかも、今時の男には珍しく
目を見て口説け、っと

個人につながる手段が多い現在
ネットでの出会い
メールでの告白
なんてそこら中で起こっている現象だ

そんな現在を生きる者としては珍しく熱く情熱的な男だ
そんな男も居て欲しいと思う女も多いだろうが
一歩間違えればただの暑苦しいヤツだ