気が付くと、芹沢くんのアパートの前に来ていた。 階段を登り、芹沢くんの部屋の前で足を止める。 そこで、やっと芹沢くんは私を見た。 「入って…」 私は足が動かない。 彼は強引に私を引っ張って中に入れ、扉を閉めた途端 身動きも取れないくらい強く私を抱きしめた。 私は、こんな展開についてゆけず、声も出せずにいた。 訳もわからず涙が込み上げてくる。 肩が小刻みに震えるのを止められない。 芹沢くんが、ハッとしたように身を起こし、苦しそうな瞳をして私を見た。