夜明け前



そう言って俺が翔子さんを呼んでいると、


「―ふふ。なんか、奏音さんが 翔子先生 って呼ぶの初めて聞いた」


珠花がそう言って笑うから、可愛くて、俺も自然と笑っていた。


「そういえばそうかも。いつも 翔子さん だもんな」


―あぁ、どうしてこんなに愛しい存在と長い間離れていたんだろう。


「―、しゅー?」


そんなことを考えていると、朔乃が目を覚ました。


「さく、…おはよ?」


「…しゅー、…っ、よかった。…よかった」


そう言って、珠花を抱きしめる朔乃。


「さく…。心配かけて、ごめんなさい」


少し驚きながらも、朔乃をギュッと抱きしめる珠花。


「…珠花まで、いなくなるのかって、…怖かったっ。…お願いだから、っ、いなくならないで」


震える声で、あふれる涙を必死にこらえようとしながら、珠花に訴えかける朔乃。


「…朔乃、ごめんね。…一人で、不安にさせて。…我慢しないで泣いていいんだよ。…いっぱいいっぱい我慢させて、ごめん」


そう寄り添う二人に、なにも言えなかった。