夜明け前



『朔乃と珠花を引き取りたい』


そう電話で両親に話した時、父は言った。


『―あぁ、なにがあっても、大切にしよう。…清風が命を賭けて守った宝だ。私も母さんも、逃げるのは終わりにするよ』


震える声で、父が決意を口にした。


『―ありがとう。…二人を、必ず連れて帰るよ』


拒絶されるかもしれない。


心を開いてくれないかもしれない。


けれど、どれだけ時間がかかっても、どれだけつらくても、絶対に諦めない。


二人の、心から笑った顔、怒った顔、泣いた顔が見れるように。


我が儘を言って甘えてくれるように。


…本来の二人に会えるように。


皆で頑張るから、二人の居場所になれるように頑張るから、だから、チャンスをください。


―家族になりたいんだ。


幼かった二人が、俺の名前を舌足らずに呼びながら駆け寄って来てくれた、あの光景をずっと忘れられないでいた。


可愛くて仕方がなかった。


離れるのが、すごくつらかった。


だから今度は、絶対に離れない。