姉様が亡くなって取り乱したのは、俺達大人の方。
朔乃も珠花は周りの大人と違ってずっと落ち着いていた。
姉様が家を出た時、俺は今の朔乃と珠花と同じ中学1年生で、まだまだ子供で世間知らずだった。
だから正直朔乃や珠花には驚いた。
幼い時に見た以来だった二人は、13歳とは思えない程大人びていて、しっかりしている、そうゆう印象だった。
けれど姉様からの手紙には、二人の本来の姿が事細かに描かれていて、自分がいなくなればきっと我慢をして感情を押し殺すだろう、そう書かれていた。
それは本当にその通りで、二人が泣いた所も弱音を吐いたところも、まして我が儘を言ったところなんて見たことが無い。
『…二人に、一緒に暮らさないかって言ったから』
だから、翔子さんがそう俺に話して来た時、俺は自分を殴りたくなった。
本来ならば、俺達がそう話すべきなのに。
優しく包んで、安心させてやらないといけないのに。
俺達家族は皆、ずっとずっと逃げて来たんだ。

