夜明け前



「…ねぇ、朔乃くん」


ベッドで眠る妹を傍で見守る彼に声をかける。


「―はい、どうかしました?」


そう言ってこちらを向く彼の顔色は、微笑んではいるけれど、疲れが隠しきれていない。


「あのね、前から言おうと思ってたことなんだけど、…よかったら、私の家に来ない?」


「え?」


そんなことを言われるなんて、思ってもいなかっただろう。


目を丸くして驚く彼が、初めて年相応に見えた。


「二人が良ければ、なんだけど。私は大歓迎なの。ゆっくりでいいから、考えてみて?」


「…はい。あの、ありがとうございます」


戸惑った表情を浮かべながらも気遣いを忘れない彼に、清風が重なる。


あなたのようには出来ないし、代わりには到底なれないだろうけど、私なりに守ってみせる。


大切な親友の遺した、宝物のめに。