夜明け前



すごく、大きな声をあげて泣き叫びたくなった。


怖くて怖くて、どうしようもなくなった。


さっきまで落ち着いていたのに、一度思考が支配されれば、止まらない。


押さえきれない感情がこぼれてしまう。


表情が、歪む。


「…しゅー?」


それに気づいたさくが私を呼んだけれど、応えられない。


「…珠花。…おいで」


母様が、腕を広げて私を呼ぶ。


吸い寄せられるように、その中にそっと寄り添う。


ぎゅっと抱きしめてくれる、温もりに涙が静かにこぼれた。


「…朔乃もおいで」


「…うん」


―かすかに聞こえたさくの声も、震えていた。


母様にさくと二人、抱き寄せられて、包まれて。


気づけば別の温もりも感じて。


奏音さんと、翔子先生、佐倉ちゃん。


どれくらいの時間だっただろうか。


六人で、悲しみを分け合った。


本当に本当に、時間が止まればいいのに。