夜明け前



「覚えてる、よ」


「…え?」


「しゅーちゃん、本当?」


母様と、…奏音さんが驚いてこちらを見る。


「…俺も覚えてる。…とゆうか思い出した、かな。しゅーも?」


「うん、思い出した」


そう言うと奏音さんは、


「…っ、すっごい嬉しい…」


―小さな頃に見た、太陽みたいな笑顔を浮かべた。


「…よかった」


そう言って安心した顔で母様が力を抜いて、ベッドに深くもたれ掛かる。


「…朔乃、珠花」


「「はい」」


「…奏音は、信頼出来るから。なにかあったら、頼っていいからね。ちゃんとお願いしてあるから」


「…なにかなくても、いつでも頼ってくれて構わないから」


「……私のこと、忘れてない?医師である前に、清風の友人だわ。…朔乃くんと珠花ちゃんは私の子同然よ。だから、私のことも気にするように」


「翔子ちゃん…、ありがとう」


「お礼なんていいの」


「…うん」


―どうにかして、このままでいられないだろうか。


我が儘なんかじゃない。


大切な人達と一緒にいたいって思うことは、当然のこと。