夜明け前



「翔子ちゃんから聞いたみたいだね。…黙っててごめんなさい。話さなきゃいけないってわかってたのに…、話せなかった。ごめんね」


「ううん、いいの。気にしないで、母様」


私がそう言えば、ふ、と寂しそうに笑った母様。


「…優しい子」


そう言いながら、私の頭を優しく撫でる母様。


さくも私も、じっと母様の言葉に耳を傾けた。


「…優しい、人を思いやれる子に育って欲しいって、二人が産まれた時に思ったの。…二人とも、本当にその通りに育ってくれた。ううん、それ以上」


「ふふ、本当?」


「うん、本当よ。私の自慢で、宝物だから」


「母様…」


「…朔乃と珠花に出会えて、本当に幸せだった。母様を選んでくれて、ありがとう」


「…俺達も。母様のところに産まれられて、幸せだよ」


「…うん、母様が母様でよかった」


「ふふ、ありがとう。……二人のこと、ずっとずっと、世界で一番愛してる。忘れないでね」


「ふふ、うん。私も世界で一番愛してる」


「俺も」


そう言って、三人で笑いあった。


不思議と穏やかで、温かい時間が流れてた。