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母の病室の前に着いて、大きく深呼吸をする。
顔をあげて、上を向いて。
さくと繋がれた手の温もりを確認して。
大丈夫、笑え、珠花。
「よし、大丈夫」
「俺も。行こうか」
―コンコン、
「母様、入るよ?」
さくがそう言ってドアを開けると、ベッドを起こして座る母が、こちらを見て微笑んでいた。
その姿を見て、私もさくも思わず駆け寄った。
「っ母様、」
力無く座る母様を前にすると、なにも言えなかった。
細く、華奢な母様の手を握りしめて、温もりを感じて少し安心した。
「珠花、朔乃、…心配かけてごめんね」
そう言って、私達の頬を優しく撫でた母様。
母様が私達を名前で呼ぶ時、それは真剣な話をする時。
「びっくりさせちゃった、ね…」
私達の手を握る母様の手がきゅっと動いた。

