夜明け前



「…母様の病気は、治らないんですか?」


「…残念だけど、治らない。…清風ちゃんね、生れつき心臓が弱かったの」


「心臓…」


人が生きるために、一番必要なもの。


「そう。小さな頃から入退院を繰り返してた。…本当はね、子供も望まない方がいいって言われてたのよ」


「「!」」


子供って、―じゃあ私達は?


「…今でも覚えてる。そう言われた清風の顔」


―いつの間にか、清風ちゃん、から清風に変わった呼び方。


懐かしむように、噛み締めるように話し出した翔子先生。


「…もう将来なんかどうでもいいって投げやりになって、病院にも来なくなった。…だけど、急になにか治療法はないかってまた病院に通い出して…。それにどんどん綺麗になるから、もしかして…って思って聞いてみたら…」


「…?」


「…清風ね、恋をしてたの。その人に会いたいから、一緒にいたいから、元気になるんだって頑張ってた」


「…もしかして、その人が」


さくも、分かったんだね。


「そう、あなた達のお父さん」


「…っ」