夜明け前



―どれくらいの時間が経ったのか。


気が付けば窓の外は真っ暗になっていて、雨もあがっていた。


いつの間にか廊下のベンチに座っていて、隣には窓の外を眺めているさくが座っていた。


「―さく?」


「あ、しゅー…」


「…母様は?」


「わからない。気づいたらここに座ってたから…」


「…私も」


どうすればいいんだろう。


教えてくれて、守ってくれるような大人は母様しかいなかった。


じゃあ今は?


私達はどうすればいい?



「…朔乃くん、珠花ちゃん」


かけられた声に目を向ければ、見覚えのある女性が立っていた。


「翔子先生…」


「ごめんね、遅くなって…。疲れたでしょう?」


「…あの、母の具合は?…検査入院じゃなかったんですか?」


少し強い口調で聞いたさくに、


「朔乃くん…ちゃんと、話すわ」


そう言って綺麗な顔を少し歪めた彼女は、母の昔からの知り合いで、今は母の主治医をしてくれている。


「…翔子先生?」


「?珠花ちゃん、なぁに?」


「…母様、大丈夫だよね?」


縋るように聞いてしまった。


大丈夫だと言って欲しかった。