夜明け前



小雨だった天気は、病院についた時にはもうドシャ降りの雨。


二人とも搾れるくらいびしょ濡れ。


「わー、びしょびしょ」


「うん、気持ち悪い…」


「しゅー、タオル持ってる?」


「…ごめん、持ってない」


「俺も、いつも母様が持たせてくれるから…」


「…母様いないとダメだねぇ」


「だね。…母様に拭くもの借りよう」


「うん」


病院の入り口で、ドシャ降りの空を見上げながら話していた時には、想像もしていなかった。


母と過ごせる時間が、ほんのわずかだなんて。


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「さく、タオルよかったね」


「ね、お礼しなきゃ」


病院内ですれ違った看護士さんにタオルをもらって、母の病室へ向う途中。


母の病室へと近づくにつれ、周りが騒がしいことに気づく。


バタバタと、焦った表情を浮かべる人達が、駆け回る。


―なにかがおかしい。


このまま進んではいけないと、頭の中で警告音が鳴り響く。