夜明け前



あの表情は、どういうことなんだろう。


嫌な感じがして。

そしたら急に怖くなって来て、悪い思考から抜け出せなくなってしまった。


パチン


「!」


「…どうしたの、電気もつけないで。真っ暗なんだけど」


「…さく、おかえり」


「ただいま。…どうしたの。なにかあった?」


そう言って、ソファーに座る私の横にふぅ、と座ったさく。


「…母様に、会いに行ったの」


「うん、一緒に行けなくてごめんね。…母様、元気だった?」


「…元気、だと思う。けど…」


「…けど?」


「…早く帰って来てねって行ったら、笑ったんだけど、でも、泣きそうにも見えた」


「……」


「…気のせい、かもしれないけど」


「…うん。退院は、いつか聞いた?」


「…聞いたけど、まだもうちょっとかかるって」


「…そう」


「…明日も行ってみる」


「俺も一緒に行くよ。先生にも話聞いてみよう」


「…うん」


「…大丈夫だよ。ね」


ぽんぽん、と優しく頭を撫でてくれるさくの手が温かくて、少し安心した。


「うん。そうだよね」


「ん、てか…お腹空いた」


「ぁ゙…ごめん。ご飯出来てない…」


「なんとなくわかってた(笑)一緒に作ろ」


「…うん。ごめんね」