―――――――――――
――――――――――
「ねぇ、もうそろそろ退院?」
通い慣れて来た母の病室でそう聞いたのは、入院してから三週間が過ぎる頃。
「あ、うん、もう少し、かなぁ」
「ふーん、そっか」
「うん、ごめんね」
「なんで謝るの。検査って大変なんだね」
「うん、そうかも」
「かもって(笑)」
「ふふ」
そう言って笑う母に、少し違和感を感じた。
「…ねぇ、家のことはちゃんと出来てる?大変でしょう」
「…うん、さくと頑張ってるよ。母様は大変だねって話してるの。だから、これからはもっと手伝うからね」
「本当?ありがとう。でも二人ともよく手伝ってくれるから、いつも助かってるよ」
「うん、…でももっと頑張る。だから、早く帰って来てね」
「…うん。ありがとう」
どうしてだろう、母が、幼い頃に一度見たことのある、泣きそうな笑顔を浮かべていた。

