夜明け前



啓太先生は、先生として私に我慢の大切さを優しく教えてくれる、のではなく。


『教師ってさぁ、本当、大変だよ。言ったって聞かないのわかってる、けど言わなきゃならない。…俺は言ってないけど』


『…啓太先生、言わないの?』


じゃあ、どうしてるの?


『…俺?…俺は……ただ信じてる、かな』


信じてる。


『…皆のことを?』


『あぁ、信じてるよ。珠花ちゃんも、朔乃くんも』


『…俺のことも?』


『そ。今日から二人とも、俺の大事な生徒』


ポンポンとさくと二人、啓太先生に頭を優しく撫でられる。


『ふふ、ありがとう。啓太先生』


信じてる。なんだかすごく嬉しい。


信じるって、言葉に出すのは簡単だけど、本当は難しい。


心はいつも、強くいられるわけではないから。


だけど、信じてもらえるなら、少し強くなれる。頑張れる。


だから、


『私、』


『うん』


優しく私を信じてくれる啓太先生に、応えなきゃ。


『啓太先生の時間は、ちゃんと頑張るから!』


『うん、いい子』


『『え?』』


『偉いねぇ、珠花ちゃん。理事長ジーンときちゃったよー、他の時間は理事長室いつでも大歓迎だからねー』


『はーい』