夜明け前



ひどーい、と顔を覆って泣いているように見える、理事長。


「…泣いちゃった?」


「珠花、あれは嘘だから、気にしなくていいよ」


「本当?」


「うん。珠花は優しい子だね」


「俺も、しゅーは優しい子だと思うよ」


「…ありがとう」


へへ。


「……なんかすっごいごまかしたよね?!俺が突っ込めない方向へ持って行ったよね?!そりゃあ、そんな風に和まれちゃったらなんも言えねぇや!」


「…十分突っ込んでる自覚は持ってねぇのか」


同感。


「……無いねっ!」


「…そうかよ。…それより、担任とクラスは?」


「…え、切り替え早ーっ」


「………」


「はいはい、もうすぐいらっしゃいますから、お待ちを」


「…そーちゃんのお友達って、みんな楽しいね」


「…え?……まぁ、そうだな?珠花がそう思ってくれるなら、よかったよ」


「うん。ね?さく」


「うん、まぁ飽きない人ばっかりだよね」


飽きない、さくはそう見てるのか。


「…確かに、飽きないな」