夜明け前



「転校……」


珠花が、なにか言いたげに表情を曇らせる。


「…珠花?どうした?」


「……転校、したら、」


「したら?」


「…逃げたって、思う」


「…それは、珠花が?それとも人が?」


「……どっちも」


キュッと下を向いて、両手を握りしめる珠花。


逃げる、か。


……別に、いいじゃないか。


そもそも悪いことなのか?


自分を傷つける者から自分を守るには、普通逃げるだろう。


傷つけようとする奴らが悪いんだぞ?


どうして傷つけられた側が気にしなきゃならないんだよ。


「逃げることは悪いことじゃないぞ。珠花」


「………」


うん、こんなんじゃだめだよな。


「…なら、珠花は朔乃が誰かに傷つけられそうになってるのを知ったとする。自分はすぐに駆け付けられない。…どう思う?」


「……逃げてって、思う」


「…だよな。俺もそう思う。それと同じで、俺達は珠花が傷つけられてるのを知って、助けたいと思うし、その苦しみから解放されて欲しいと思ってる」


「…うん」